私の携帯に祐希から電話があったのは、約束している時刻の15分前でした。
「祐希です。今、渋谷にいます。川島さんは何時ごろに着きますか?」
「私も渋谷にいるよ。待ち合わせの時間には少し早いけど、これから会えるかな?」
「は… はい、大丈夫です」
私達が既に近くにいることを知った彼は、早る心を押さえ切れずに言葉を続けます。
「あ… あの… 由香里さんも一緒ですよね」
「もちろん一緒にいるよ」
僅かな会話の間から彼の安堵が伝わってきます。由香里が来ると判っていながら、今まで様々な不安と焦りが彼の心を揺さぶっていたのでしょう。
駅前からの緩やかな坂を上った交差点が待ち合わせ場所でした。
由香里は不安気な表情を浮かべながら、行き交う若い男性を目で追います。彼女にとって、決して自分自身から望んだ訳ではない出逢いが、時が迫る毎に重圧となって覆いかぶさるのでしょう。
「川島さん… こんにちは」
先に声をかけたのは祐希の方からでした。
彼は歩道の脇に立つ私達の横から、緊張したような笑顔を浮かべながら会釈をしました。
不自然な取り繕いをすることもなく、むしろ彼らしい清々しさを感じた程です。
由香里は彼に振り向くと、一瞬、小さく息を飲み込み、慌てて会釈を返します。
「祐希くん、妻の由香里です」
私は平静さを装い、年上の大人として相応しい振る舞いを計算しながら、彼に妻を紹介しました。
「由香里です。こんにちは」
妻は私の横に並んだまま挨拶しながら祐希の姿を確かめました。彼女が押し隠す戸惑いと困惑を私はすぐに感じ取ったのです。
「とりあえず何処かで座って話をしようか」
私は近くの通りにあるカラオケ店に彼を案内しました。周囲の目を遮る個室の中の方が、落ち着いて話が出来ると思ったからです。
少し離れて私達の後を歩く祐希に悟られないように、彼に対する印象を妻に聞きました。
「大学生って聞いてたけど… 私には彼がまだ16才か17才くらいにしか見えない」
妻は背後にいる彼に気付かれないように、言葉少なに答えます。
「だって… ついこの間まで高校生だったんだから」
私は少し苛立ちながら言葉を返しました。妻の迷いは最初から予想していた筈なのに、私の中には理不尽な焦りが芽生えていたのでしょう。
様々に入り混じる感情を押し隠し、繁華街の中にあるカラオケ店入ったのです。
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