祐希は、下腹部を露わにした自分自身の姿に我に帰り、慌てて膝まで下ろしたままのジーンズをたくし上げます。
私は彼に来週の日時を伝えました。
彼は心に刻み込むように何度も頷きます。この後も永遠の記憶として残る日の約束を、彼は心の中で繰り返したのです。
フロントで清算を済ませ、私達はカラオケ店を出ました。
街には相変わらず大勢の人が行き交っています。先程までの閉ざされた狭い空間と、賑やかな街中の喧騒の差に戸惑いを感じました。
祐希は無言のまま俯き、私達の後ろを歩きます。普通では有り得ない特別な三人の関係の中で、自分がどう振る舞うべきか判らないのでしょう。
それは私達夫婦にとっても同じでした。
由香里が立ち止まり、彼に声をかけます。
「祐希くん、もうすぐ誕生日だって言ってたよね」
「は、はい… 今度の火曜日が誕生日です」
「じゃあ… 何かプレゼントを買ってあげようか」
妻は彼に微笑みかけるように言うと、私に目で同意を求めました。はにかむ少年の純真な仕草が、由香里の中で芽生えつつある彼への慈しみを、より深いものへと誘うのでしょうか。
私達は、歩道に面した店の棚に並んだシャツを眺めながら中を歩きます。
由香里はその中の一つを手に取ると、祐希の胸に重ね合わせました。淡いパステル調の色あいが、清廉な彼の顔立ちを引き立てます。
「ちょっと色が明る過ぎるかも知れないけど、祐希くんなら似合うかもね」
由香里はもう一着のシャツを手に取ると、二つを交互に祐希の胸に重ねました。彼は近くにある妻の顔を意識して、恥ずかしそうに目を逸らします。
寄り添って並ぶ二人の姿は、周りの人にどう見えるのでしょう。
年齢の離れた姉と弟…
妻でありながら、夫の前で10才以上も年下の少年と舌を絡め、堪え切れない若い欲望の自慰を傍らで見つめたなどとは、誰も思いもしないでしょう。
来週、結ばれ合う約束をした二人を見つめながら、私の中で様々な妄想が巡ります。
「どっちにしようか…」
鏡の前で妻が彼に問いかけます。
「どっちも同じくらい気に入ってます。由香里さんが決めて下さい」
「じゃあ、両方にしようね」
由香里の答えに祐希が遠慮している間に、彼女はレジで清算を済ませました。
「少し早いけど、お誕生日おめでとう」
少年は、由香里から手渡された紙袋を受け取りながら、嬉しそうな笑みを浮かべます。
店を出て、私達は駅へと向かいました。初夏の夕日が長い影を道路に映し出しています。彼はもっと由香里と一緒の時を過ごしたそうな様子でした。
由香里から渡された紙袋を大切そうに抱える祐希にとって、今日からの一週間は耐え難い程に長く感じられることでしょう。妻の後ろ姿を見つめる少年の眼差しが、時折、男としての欲望を押し隠した視姦の目に変わります。
それでいいんだ…
約束の日が来るまでの間、妄想の中で思うままに妻と結ばれ合っても…
私は由香里が目を離した隙に、上着に入れていたコンドームの残りを彼に手渡しました。
「帰ったら、自分で付ける練習をするんだよ… 来週の土曜日、私の妻が祐希くんの精液で妊娠しないようにね…」
彼は小さな包みを握り締めると、慌ててジーンズのポケットに押し込みました。
本当は由香里が付けてくれる筈です。私は約束の日までの間、昂ぶる少年の欲望を弄ぶことで、離れていながらも彼に対する支配を続けたかったのです。
手渡したコンドームは、そのための小道具として用意したのでした。
私達は駅で祐希と別れ、改札へと向かいました。彼は立ち止まったまま、人混みの中に消える由香里を見つめています。
一週間後の出来事に想いを馳せ、他人の妻に心を奪われる少年の姿に私自身を重ねながら、欲望を支配する側の優越を反芻したのです。
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